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フラッシュ85 |
2005年11月22日
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連立協定に見るドイツ新政権の対外政策 |
| (財)国際貿易投資研究所 研究主幹 田中 信世 |
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メルケル次期首相の下で「大連立」を目指し連立交渉を行っていたドイツの2大政党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)は、2005年11月11日、政権綱領に関する協議を終え、“Gemeinsam fuer Deutchland - mit Mut und Menschlichkeit(勇気と人間性をもってドイツのために共同で取り組もう)”と題する連立協定(Koalitionsvertrag zwischen CDU, CSU, SPD)を発表し、11月18日調印した。 〔対外政策全般〕 まず、対外政策全般について連立協定は、欧州連合(EU)統合とアメリカとの連携(大西洋連携)が「ドイツの対外政策の最も重要な2本柱」と規定している。イラク戦争への対応を契機としてアメリカとの関係がぎくしゃくしたものになったことに対して、キリスト教民主同盟(CDU)は従来からシュレーダー政権の対外政策を厳しく批判し、アメリカとの関係改善を主張していたが、欧州連合(EU)と並んでアメリカとの連携強化を対外政策の2本柱に据えたことは、こうしたCDUの主張が反映されたものと見られる。 〔EU憲法条約〕 EU憲法の成立に向けた今後の対応について連立協定は、まず「EU憲法は、(社会政策を重視した)欧州的な価値観に基づく欧州の建設、市民権の拡大、EUと加盟国との間の権限分担の明確化、EUによる過剰な規則の押し付けや官僚主義の排除、加盟国議会の意思決定への参加などの点で重要な進展を含んでいる」として、EU憲法条約の批准推進の継続は重要との認識を示している。そして、ドイツとしては、EU憲法条約を批准していない加盟国の批准手続きの進展に向けた努力を2006年以降も継続し、特に2007年上半期にEU議長国の順番がドイツに回ってくることを利用して批准推進に向けた新しいイニシアティブをとりたいとしている。 〔リスボン戦略〕 欧州経済の競争力の強化を通じて経済成長と雇用を高めることを目指した2005年3月の新リスボン戦略(注1)に関しては、連立協定は「支持」を表明している。ただ、外資系企業の誘致競争の過熱で、加盟国の間で法人税の引き下げ競争が行われ、ドイツが不利な状況に追い込まれているという現状に鑑み、ドイツとしては、加盟国間の不公正な法人税引き下げ競争を避けるため、法人課税の計算基準の共通化および最低法人税率の近接化に努力することを打ち出している。 〔EU財政〕 加盟国間で意見の差が埋まらず交渉が長引いているEUの中期財政計画(注2)については、連立協定は「交渉の早期決着に努力する」と表明しているが、その際、EUの財政計画はドイツの負担能力を考慮に入れ、ドイツの財政再建努力に配慮したものにする必要があると主張している。また、連立協定は「ドイツはEU財政におけるドイツの負担軽減に努め、国民総所得(GNI)の1%以上は負担しない」という従来からの主張を明確に打ち出している。さらにEUに対して支出の削減努力を求めているのも従来の主張と同じである。 〔EU構造政策〕 構造政策関連では「EUの地域政策の核となっている構造政策(注3)は共同体内部の連帯を強める上で重要」との認識を示しているが、EUの地域政策への支出と個々の加盟国の負担の間には適切なバランスが必要との考え方を示している。また、構造政策においては、@今後、新規加盟国が欧州構造基金の資金の主要な受け取り手となるが、「新規加盟国と国境を接するドイツの国境地域も中・東欧諸国のEU加盟に伴う変化への特別な適応過程にさらされているので、構造基金が支払われる必要がある」とするとともに、A構造基金の目標2(注3)への支援においてドイツが他の加盟国と比べて不利な扱いを受けるようなことがあってはならないと主張している。 〔ドイツの財政赤字とEU安定・成長協定〕 財政赤字をGDPの3%以内にするというEUの安定・成長協定の財政基準をドイツが過去3年間にわたって上回っている問題(注4)については、連立協定は「2007年中に3%以内の基準を達成したい」と述べている。連立協定に謳われた以上、ドイツ新政権は財政赤字の削減に向けて真剣に取り組むことになるとみられるが、財政赤字の削減はあくまで、従来より高い経済成長、雇用の改善、技術革新の進展などといった経済事情の好転を前提としたものであり、今後の経済動向次第では、財政赤字の削減が思うように進まないといった事態に陥ることも考えられる。こうした事情が、連立協定の中で「基準を達成する」という明確な表現ではなく、「基準を達成したい」という微妙な表現の差となって現れているような気がする。 〔EU拡大問題〕 EUの拡大問題については、連立協定はまず、「慎重な拡大政策は欧州大陸の平和と安定をもたらすうえで重要な寄与をする」と述べて、EUに対して拡大政策を慎重に進めることを求めている。そのうえで、EU加盟条約に調印したブルガリアとルーマニアの加盟時期については、両国が加盟条件を満たすかどうかにかかっており、両国の加盟条約をドイツが批准するかどうかは、欧州委員会の加盟準備進捗報告と欧州委員会の推薦を見たうえで、決定するとしている。また、クロアチアのEU加盟交渉が今年10月に始まったことに関しては「歓迎する」とし、さらに、2003年6月のギリシャ・テッサロニキのEU首脳会議で打ち出されたクロアチア以外の西バルカン諸国へのEUの拡大方針についても支持を表明している。
これは、トルコの加盟問題については当面、トルコの加盟交渉の推移やトルコにおける改革の進展を見極めるという姿勢を示したようにも見える。しかし、前述のCDUの主張とも考え合わせると、この問題に対する「本音」は3.であり、2.はそれをオブラートで包んだもののようにも見えるのだが、このように見るのはあまりにも穿った見方ということになるのであろうか。 <注> |